2026年2月28日、アメリカ中央軍(CENTCOM)は「オペレーション・エピック・フューリー」の開始を宣言した。
対イラン軍事作戦としては史上最大規模。弾道ミサイル施設、核関連拠点、海軍基地、そしてイランの最高指導者ハーメネイー師の司令部まで、初日から100機以上の航空機と多数のトマホーク巡航ミサイルが殺到した。
そしてこの作戦で、世界中のミリタリーファンが注目した「ある出来事」が起きた。
米海軍最新鋭の原子力空母USSジェラルド・R・フォード(CVN-78)が、電磁式航空機発射システム(EMALS)を使って実戦攻撃任務の航空機を射出したのである。蒸気カタパルトに代わる新世代の発艦システムが、ついに戦場で”本物の仕事”をした瞬間だった。
この記事では、エピック・フューリー作戦における2隻の空母打撃群の役割、EMALS実戦運用の意義、そして日本のいずも型護衛艦の空母化にとっての示唆までを、まるごと解説する。
エピック・フューリー作戦とは何か──なぜアメリカはイランを攻撃したのか
エピック・フューリー作戦を理解するには、2025年6月の「オペレーション・ミッドナイト・ハマー(12日間戦争)」まで遡る必要がある。
2025年6月、アメリカとイスラエルはイランの核濃縮施設フォルドウとナタンツ、そしてイスファハンの金属加工施設を空爆した。これによりイランの核兵器開発能力は大きく後退したが、完全な除去には至らなかった。その後、停戦交渉が行われたものの、イランは核開発計画の放棄を拒否し続けた。
2026年1月にはイラン国内で大規模な反政府デモが発生し、治安部隊による弾圧で数万人が犠牲になったとされる。トランプ大統領はイランに対する軍事行動を示唆し、2003年のイラク戦争以来最大規模の中東への兵力集結を開始した。2月中旬には米イラン間で間接的な核交渉が再開されたが、まさにその交渉の最中に奇襲攻撃が実行された。
2026年2月28日、トランプ大統領の命令でエピック・フューリー作戦が発動。作戦目標は以下の4つである。
- イランの核兵器取得を永久に阻止する
- 弾道ミサイルの兵器庫と生産施設を破壊する
- テロ代理組織への支援ネットワークを断絶する
- イラン海軍を殲滅する
初日の攻撃でハーメネイー最高指導者が死亡したとの報道が流れ、イランは猛烈な報復を開始した。弾道ミサイルとシャヘド無人機がイスラエル、クウェート、バーレーン、UAE、カタール、サウジアラビアの米軍基地や同盟国施設に殺到した。ホルムズ海峡はイランによって封鎖され、原油タンカー16隻以上が被弾するなど、中東全域が火の海と化した。
作戦開始から1か月が経過した現在も、米軍の空爆は続いている。3,000以上の目標が打撃され、イランの弾道ミサイル攻撃能力は初日比で90%減少、無人機攻撃は83%減少したとCENTCOMは発表している。米軍側にも犠牲が出ており、3月下旬時点で13名の米兵が戦死、約290名が負傷している。
2隻の空母打撃群──リンカーンとフォードの配置と役割

エピック・フューリー作戦の海上航空戦力の主軸を担ったのは、2隻の空母打撃群(CSG)である。
USSエイブラハム・リンカーン(CVN-72)──攻撃の先鋒
ニミッツ級原子力空母リンカーンは、2026年1月26日から中東に展開していた。アラビア海に陣取り、第9空母航空団(CVW-9)を搭載。護衛にはアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦USSフランク・E・ピーターセンJr.(DDG-121)、USSスプルーアンス(DDG-111)、USSマイケル・マーフィー(DDG-112)が随伴し、さらに独立展開の駆逐艦6隻がアラビア海全域に散開していた。
リンカーンはエピック・フューリーの「槍の穂先」だった。2月28日の初撃にリンカーン搭載機が参加し、テヘラン、イスファハン、コム、カラジ、ケルマーンシャーへの攻撃を実施。この攻撃波にはハーメネイー師の司令部への打撃も含まれていたと報じられている。
注目すべきは、リンカーンに海兵隊のF-35Cライトニング II飛行隊(VMFA-314「ブラックナイツ」)が搭載されていたことだ。F-35Cはニミッツ級の蒸気カタパルトから射出され、そのステルス性能を活かしてイラン防空網の奥深くへ浸透、高価値目標への精密打撃を実施した。CENTCOMが公開した映像には、リンカーンの飛行甲板からF-35CとF/A-18スーパーホーネットが昼夜を問わず発艦・着艦を繰り返す様子が記録されている。
イラン革命防衛隊(IRGC)はリンカーンに弾道ミサイル4発が命中したと主張したが、CENTCOMはこれを完全に否定。「リンカーンには命中していない。ミサイルは近くにすら到達しなかった」と声明を出し、リンカーンが通常通り航空作戦を継続している写真と映像を公開した。
USSジェラルド・R・フォード(CVN-78)──史上初のEMALS実戦運用
フォード級原子力空母の1番艦フォードは、この作戦で世界の注目を集めた。
フォードは2025年6月24日にノーフォークを出港して以来、すでに8か月以上に及ぶ長期展開中だった。ヨーロッパ方面から一転、2026年1月のベネズエラ・マドゥロ元大統領拘束作戦(カリブ海)に参加した後、2月に中東方面へ方向転換。2月20日にジブラルタル海峡を通過して地中海に入り、クレタ島スーダ湾で補給を行った後、2月26日にはイスラエル沖に到着。3月5日にはスエズ運河を通過して紅海に進出し、本格的な作戦海域に展開した。
フォードが搭載するのは第8空母航空団(CVW-8)で、構成は以下の通りである。
- VFA-31「トムキャッターズ」(F/A-18E)
- VFA-37「レイジン・ブルズ」(F/A-18E)
- VFA-87「ゴールデン・ウォリアーズ」(F/A-18E)
- VFA-213「ブラックライオンズ」(F/A-18F)
- VAQ-142「グレイウルヴズ」(EA-18Gグラウラー)
- 早期警戒機E-2Dアドバンスド・ホークアイ飛行隊
- MH-60ヘリコプター飛行隊
3月1日、CENTCOMはフォードの飛行甲板からEA-18Gグラウラーが発艦する写真、そしてF/A-18Eスーパーホーネットが発艦準備を行う写真を公開した。これらの航空機はすべてEMALS(電磁式航空機発射システム)によって射出されている。蒸気カタパルトに頼らない電磁カタパルトが、実戦攻撃任務の航空機を射出した、歴史上初めての瞬間だった。
フォードとリンカーンを合わせると、搭載航空機は約150機。この圧倒的な航空戦力が、陸上基地からのB-52H戦略爆撃機やB-2ステルス爆撃機、そしてMQ-9リーパー無人機と連携し、イラン全土を24時間態勢で叩き続けた。
さらに第3の空母、USSジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が3月6日に展開前訓練(COMPTUEX)を完了し、大西洋を横断して東地中海に向かう準備を整えている。CENTCOMのブラッド・クーパー大将は「今後数週間で、さらに何倍もの戦力が到着する」と述べた。
EMALS──電磁カタパルトとは何か
ここで、ミリタリーファンなら絶対に理解しておきたい「EMALS」について詳しく解説する。
EMALSとはElectromagnetic Aircraft Launch Systemの略で、従来の蒸気カタパルトに代わるリニアモーター方式の航空機発射装置である。フォード級空母の最大の革新技術のひとつだ。
蒸気カタパルトの限界
ニミッツ級までの空母は、1950年代に実用化された蒸気カタパルトを使用していた。原子炉で発生させた蒸気を巨大なシリンダーに貯め、一気に放出してピストンを加速させ、航空機を射出する仕組みである。
この方式には70年以上の実績があるが、問題点も多い。蒸気の圧力制御が難しく、軽い機体には過大なストレスがかかる一方、重い機体には推力が不足する場合がある。また、蒸気配管の維持管理には膨大な人員が必要で、発射のたびに蒸気を蓄圧する「リサイクルタイム」がかかるため、ソーティ生成率(1日に発艦できる回数)にも制約があった。
EMALSのメカニズム
EMALSはリニア誘導モーターを使用する。電磁力で「キャリッジ」と呼ばれる金属ブロックを加速させ、航空機を射出する。蒸気の代わりに電力を使うため、加速エネルギーをデジタル制御で精密に調整できる。
これにより、軽量の無人機から重量級のF/A-18Fスーパーホーネットまで、機体に最適な加速プロファイルで射出が可能となった。機体へのストレスが軽減されるため、機体寿命の延伸にも寄与する。
フォード級の原子炉A1Bは、ニミッツ級の原子炉よりも大幅に出力が向上しており、EMALSの膨大な電力需要を賄うだけでなく、将来的なレールガンやレーザー兵器への電力供給も視野に入れた設計となっている。
先進着艦制動装置(AAG)
EMALSとセットで導入されたのが、AAG(Advanced Arresting Gear)である。従来の油圧式アレスティング・ギアに代わり、デジタル制御のエネルギー吸収システムで着艦時の衝撃を制御する。軽い無人機から重い打撃戦闘機まで、幅広い重量レンジに対応できる。
先進兵器エレベーター
フォード級にはリニアモーター駆動の兵器用エレベーター11基が装備されている。各エレベーターは毎分150フィートの速度で最大24,000ポンドの兵装を移動可能で、弾薬庫から飛行甲板への兵装供給を劇的に高速化した。これにより、ソーティ生成率はニミッツ級比で約33%向上する設計である。理論上、1日160ソーティの持続的な航空作戦が可能とされている。
開発の苦難
ただし、ここまで来るのに山あり谷ありだった。EMALSの開発は度重なる遅延とコスト超過に見舞われ、フォード級の建造費は約130億ドルにまで膨らんだ。先進兵器エレベーターの認証遅延、トイレ・汚水処理システム(VCHT)の不具合など、技術的問題が次々と発覚した。トランプ大統領(第1期)が「蒸気式に戻すべきだ」と発言したこともあるほどだ。
しかし、エピック・フューリー作戦は、EMALSの真価を証明する場となった。高強度の実戦環境下で連日の航空作戦を維持し、スーパーホーネットやグラウラーを次々と射出して攻撃任務に送り出した。カタログスペックが戦場で実証されたのである。Stars and Stripes紙は、この展開をEMALSの「実戦テスト」と表現し、信頼性がそのまま攻撃回数と即応時間に直結する状況で、フォードのシステムが「本物の作戦需要」に晒されていると報じた。
イラン海軍殲滅──空母航空戦力が沈めたもの
エピック・フューリー作戦の最も劇的な成果のひとつが、イラン海軍の事実上の壊滅である。
作戦開始からわずか6日間で、CENTCOMのクーパー大将は「完全な制空権・制海権を確立した」と宣言した。イラン海軍(IRIN)と革命防衛隊海軍(IRGCN)の艦艇120隻以上が撃沈または戦闘不能に追い込まれた。
ドローン空母「シャヒード・バゲリー」の撃破
最も衝撃的だったのは、イラン初のドローン空母IRISシャヒード・バゲリー(C110-4)の撃破である。
この艦は全長240メートルの商船を改造したもので、排水量41,978トン、180メートルのスキージャンプ式飛行甲板を持ち、シャヘド無人機やヘリコプターを運用する移動式海上基地として2025年2月6日に就役したばかりだった。航続距離22,000海里、1年間の無補給作戦が可能とされ、革命防衛隊海軍のドローン戦力投射の中核を担う存在だった。
CENTCOMはエピック・フューリー発動後数時間以内に、バンダルアッバース港に停泊中のシャヒード・バゲリーを攻撃。飛行甲板と後部甲板に複数の命中弾が確認された。CENTCOMは「撃沈された空母はシャヒード・バゲリーだけだ」と発表し、IRGCによる「USSリンカーンを撃沈した」との主張を一蹴した。
コナラク海軍基地とバンダルアッバースの壊滅
衛星画像が明らかにしたのは、バンダルアッバースとコナラクの両海軍基地の壊滅的な被害である。
コナラク海軍基地では、ジャマラン級(モウジュ級)コルベットが埠頭で撃沈されている様子が確認された。バヤンドル級フリゲート2隻、ジャマラン級1隻が沈没。さらに複数のヘンディジャン級哨戒艇も大破した。バンダルアッバースでは、前方展開支援艦IRISマクラン(元日本建造のアフラマックスタンカー)が攻撃を受け炎上している衛星画像が公開された。
また、3月4日にはスリランカ沖のインド洋で、MILAN 2026多国間海軍演習から帰投中のイラン海軍モウジュ級フリゲートが、米原子力潜水艦の魚雷攻撃を受けて撃沈されたとの報道もあった。
CENTCOMは「2日前にはオマーン湾にイランの艦艇が11隻いた。今日はゼロだ」と発表。数十年にわたって国際海運を脅かしてきたイラン海軍の脅威が、文字通り海の底に沈んだのである。
この海軍撃滅の成功には、リンカーンとフォードの空母航空団から発進したF/A-18スーパーホーネットの精密攻撃、EA-18Gグラウラーによるイラン防空レーダーの制圧、そしてアーレイ・バーク級駆逐艦群から発射されたトマホーク巡航ミサイルが決定的な役割を果たした。
空母の戦略的価値──なぜ陸上基地だけでは不十分なのか
エピック・フューリー作戦は、空母打撃群の戦略的価値をあらためて世界に示した。
イランは報復として、クウェート、バーレーン、カタール、UAE、サウジアラビアにある米軍基地を弾道ミサイルとシャヘド無人機で攻撃した。アリ・アルサーレム空軍基地(クウェート)、アルウデイド空軍基地(カタール)、キャンプ・アリフジャン(クウェート)、さらにはバーレーンの米第5艦隊司令部までが被弾。21名の米兵が死亡したとの報道もある。クウェートのF/A-18がフレンドリーファイアで米空軍F-15Eを3機撃墜する事故すら発生した。
つまり、固定された陸上基地は脆弱なのだ。座標がわかっている基地は弾道ミサイルの格好の的となる。
一方、空母打撃群は「動く主権領土」である。その位置は常に変化し、イランの標的計算を複雑化させる。フォードが東地中海から紅海へ移動したように、空母は政治的判断や戦術的必要に応じて迅速にポジションを変えられる。ホスト国の政治的制約に縛られることもない。実際、スペインはロタとモロンの基地使用をアメリカに拒否した。しかし空母は他国の許可なく公海から作戦を遂行できるのだ。
フォード級が理論上1日160ソーティを生成できるという能力は、陸上の1飛行場に匹敵するかそれ以上の航空戦力を、外洋のどこからでも投射できることを意味する。エピック・フューリーは、この理論を実戦で証明した作戦となった。
フォードの試練──長期展開と乗組員の苦闘

しかし、華々しい戦果の裏で、フォード乗組員の苦闘も伝えられている。
フォードは2025年6月24日にノーフォークを出港して以来、2026年3月時点で出港から9か月以上が経過。ベトナム戦争後最長の空母展開記録に迫る状況だった。ヨーロッパからカリブ海、そして中東へと転戦を繰り返す中、乗組員の疲労と士気の問題が報じられた。
3月12日には艦内の洗濯室で火災が発生し、2名の水兵が負傷。火災自体は戦闘によるものではなく、原子炉や推進系統への被害もなく艦は完全に作戦を継続したが、長期展開による設備の疲弊を示す出来事だった。
海軍作戦部長ダリル・コードル大将は「水兵たちは、予定より長く故郷を離れていることを理解している。国家が彼らを前線に必要としているからだ」と述べ、インターネット環境の拡充など士気維持策を講じていることを明らかにした。
空母とは、約5,000人の人間が生活する「浮かぶ都市」である。そのハードウェアがどれほど先進的であっても、それを動かすのは人間だ。エピック・フューリーは、技術と人間の限界が交差する場でもあった。
日本への示唆──いずも型護衛艦の空母化と「EMALS」の意味
ここからは、日本のミリタリーファンとして避けて通れない話題に踏み込む。
いずも型護衛艦「いずも」「かが」の軽空母化改修が進んでいる。2025年8月には航空自衛隊の新田原基地にF-35Bが初配備され、最終的に42機体制となる予定だ。「いずも」は現在JMU横浜事業所で第2次改修中であり、艦首の矩形化を含む大規模改修は2027年度中に完了予定とされている。
エピック・フューリーにおけるフォードのEMALS運用と、リンカーンからのF-35C実戦運用は、日本にとっていくつかの重要な示唆を含んでいる。
カタパルトなしでもF-35Bは戦える
いずも型にはカタパルトもスキージャンプ台もない。F-35Bは短距離離陸・垂直着陸(STOVL)方式で運用される。これはフォードのEMALS+F-35Cの組み合わせとは根本的に異なるアプローチだ。
しかし、エピック・フューリーでリンカーン搭載の海兵隊F-35C(VMFA-314)がイラン防空網を突破して精密打撃を実施した実績は、F-35プラットフォーム全体のステルス性能と打撃能力を証明するものである。いずも型から飛び立つF-35Bも、同じセンサー融合技術、同じAIM-120D AMRAAM、同じGBU-31/32 JDAMを使用する。違いは発艦方式と航続距離であり、ステルス浸透能力は同等だ。
海上自衛隊のいずも型護衛艦がF-35Bを搭載して南西諸島周辺に展開すれば、那覇基地が攻撃された場合のバックアップとして、あるいは米空母打撃群と連携した艦隊防空の一翼として、大きな戦力となりうる。
空母の脆弱性と生存性
エピック・フューリーではIRGCがリンカーンへの弾道ミサイル攻撃を主張した(米側は否定)。イランの弾道ミサイルが空母を狙ったという事実自体が、現代の空母運用におけるリスクを浮き彫りにしている。
中国のDF-21D対艦弾道ミサイルやDF-17極超音速滑空兵器は、イランのミサイル能力とは比較にならないほど強力である。いずも型が有事に西太平洋で運用される場合、中国ロケット軍の脅威はイランの比ではない。
だからこそ、日本のイージス艦「こんごう型」「あたご型」「まや型」によるBMD(弾道ミサイル防衛)と、いずも型の艦隊防空F-35Bを組み合わせた「多層防御」の構築が不可欠なのだ。エピック・フューリーでリンカーン打撃群の護衛駆逐艦がイージスシステムでイランのミサイルを迎撃し、空母を守り抜いたように。
イランの「ドローン空母」と中国空母「福建」
イランが失ったドローン空母シャヒード・バゲリーは、商船改造の急造艦だった。一方、中国海軍の最新空母「福建」は電磁カタパルト(中国版EMALS)を3基搭載する本格的な正規空母である。
フォードのEMALSが実戦で使われた今、中国がこの技術をどこまで実用化しているかという疑問はますます重要になる。「福建」の電磁カタパルトは公試中と伝えられているが、実戦投入はまだ先だ。しかし、中国がEMALS技術を手にした場合、J-35ステルス艦載機との組み合わせで太平洋における航空戦力バランスが大きく変わる可能性がある。
エピック・フューリー作戦 主要空母打撃群の比較
| 項目 | USSリンカーン(CVN-72) | USSフォード(CVN-78) |
|---|---|---|
| 艦級 | ニミッツ級 | フォード級 |
| 排水量 | 約100,000トン | 約100,000トン |
| カタパルト | 蒸気カタパルト4基 | EMALS 4基 |
| 搭載航空団 | CVW-9 | CVW-8 |
| 主力戦闘機 | F/A-18E/F、F-35C | F/A-18E/F |
| 展開海域 | アラビア海 | 紅海(東地中海→紅海) |
| 主な任務 | 初撃参加、持続的打撃、対イラン深部打撃 | 航空作戦支援、SEAD/DEAD、持続的打撃 |
| 護衛艦艇 | DDG-121、DDG-111、DDG-112ほか | DDG群(ウィンストン・チャーチル、ベインブリッジほか) |
| 設計ソーティ生成率 | 約120回/日 | 約160回/日(33%向上) |
日本の防衛にとって何を意味するのか
エピック・フューリー作戦は、我々日本のミリタリーファンに多くの教訓を与えてくれた。
第一に、空母は死んでいない。「空母不要論」は繰り返し唱えられてきたが、陸上基地がミサイル攻撃に晒される現代戦において、移動可能な航空基地の価値はむしろ増している。
第二に、EMALS技術は実用段階に入った。13年の開発期間と約130億ドルの建造費は、将来の電磁カタパルト空母のコスト削減と信頼性向上の礎となるだろう。
第三に、F-35の実戦証明が積み上がった。リンカーンからのF-35C実戦運用は、ステルス艦載機がイランのような統合防空網を持つ国家に対して有効であることを示した。日本のF-35A(航空自衛隊147機)とF-35B(42機)もまた、この実戦データの恩恵を受ける。
そして第四に、防衛産業の重要性である。フォードのEMALSを製造したのはゼネラル・アトミクス社、F-35を製造したのはロッキード・マーチン社。日本の防衛産業もまた、三菱重工、川崎重工、IHIといった企業群が自衛隊の装備を支えている。防衛予算のGDP2%への拡大は、こうした企業群の技術力を維持・発展させるために不可欠なのだ。
手元で再現する──空母の世界をもっと深く知るために
ここまで読んでくれた読者には、ぜひこの知的興奮を「形」にしてほしい。
プラモデル・模型
空母の模型は、その圧倒的なスケール感が魅力だ。
ピットロードの1/700「USSエンタープライズ CVN-65」は、ニミッツ級の前身となった原子力空母の精密キットで、飛行甲板に並ぶ艦載機を自分で並べる楽しみがある。リンカーンのようなニミッツ級空母の世界を手元で再現するなら、この系統のキットがおすすめだ。
もちろん、日本の空母を作りたいなら、ハセガワの1/700いずも型護衛艦キットも見逃せない。F-35Bの極小パーツを飛行甲板に載せる日が来るとは、感慨深いものがある。
タミヤやハセガワのF-35各種キット(1/48や1/72スケール)もぜひチェックしてほしい。エピック・フューリーのVMFA-314仕様で塗装すれば、今まさに歴史が動いている最前線の機体を手元に置くことができる。
書籍
空母運用の「なぜ」を深く理解するなら、書籍は最良の教材だ。空母の歴史から現代の戦術まで、日本語で読める優れた書籍が多数出版されている。ミリタリー書籍は読めば読むほど、ニュースの解像度が上がる。
まとめ
エピック・フューリー作戦は、21世紀の空母戦力がどのように使われるのかを世界にリアルタイムで示した。
ニミッツ級リンカーンは蒸気カタパルトでF-35CとF/A-18を射出し、イラン最深部への精密打撃を実施した。フォード級フォードはEMALS(電磁カタパルト)で史上初の実戦航空作戦を遂行し、130億ドルの投資が戦場で実を結ぶ瞬間を作った。イラン海軍は120隻以上の艦艇を失い、ドローン空母シャヒード・バゲリーは就役からわずか1年で海の底に沈んだ。
そしてこの戦争は、まだ終わっていない。
日本にとって、この作戦の教訓は他人事ではない。いずも型の空母化改修、F-35Bの配備、そして中国空母「福建」の電磁カタパルト──太平洋の向こう側で起きていることは、明日の日本の安全保障に直結している。
だからこそ、我々は目を背けずに見つめ続ける。知ることが、守ることの第一歩だからだ。

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