
世界の電子戦機を調べると、EA-18Gグラウラー、J-16D、EC-37B、RC-135、RC-2など、性格の異なる機体が同じ一覧に並ぶ。だが、これらをすべて「敵のレーダーを妨害する飛行機」と理解すると実像を見失う。
電子戦機には、攻撃隊へ随伴して敵レーダーを妨害する戦術電子攻撃機、安全圏から通信や指揮系統へ作用するスタンドオフ電子攻撃機、相手の電波を受信・分析して脅威データを作る電子情報収集機がある。2026年の世界を読む鍵は、単純な妨害出力ではなく、この三つの機能をどのように組み合わせているかにある。
- 世界の電子戦機を調べると、EA-18Gグラウラー、J-16D、EC-37B、RC-135、RC-2など、性格の異なる機体が同じ一覧に並ぶ
- だが、これらをすべて「敵のレーダーを妨害する飛行機」と理解すると実像を見失う
- 2026年の世界を読む鍵は、単純な妨害出力ではなく、この三つの機能をどのように組み合わせているかにある
- 本稿では、2026年7月31日時点で運用中、配備移行中、開発中と確認できる主要な電子戦機を国別・任務別に整理する
本稿では、2026年7月31日時点で運用中、配備移行中、開発中と確認できる主要な電子戦機を国別・任務別に整理する。なお、検索されることの多い「EC-37B」は旧名称であり、米空軍は2023年に「EA-37B」へ正式改称している。

まず結論|2026年の電子戦機は三つの系統に分かれる
- 電子戦機の全体像は、次の三系統に分けると理解しやすい
- 一方、スタンドオフ型と情報収集型は旅客機、輸送機、ビジネスジェットを母体とする例が多い
- 速度では劣るが、長時間滞空でき、複数の専門員と大型の受信・処理装置を搭載できる
- 私は、2026年の電子戦機を「最強」という一語で並べるべきではないと考える
電子戦機の全体像は、次の三系統に分けると理解しやすい。
| 系統 | 主な任務 | 代表機 |
|---|---|---|
| 戦術電子攻撃機 | 攻撃編隊への随伴、レーダー妨害、防空制圧支援 | EA-18G、J-16D、J-15D/J-15DT、トーネードECR |
| スタンドオフ電子攻撃機 | 脅威圏外から広域妨害、通信・指揮系統への電子攻撃 | EA-37B、C-130HE、HAVA SOJ、Il-22PP |
| 電子情報収集機 | レーダー・通信電波の収集、識別、位置標定、脅威ライブラリ構築 | RC-135V/W、RC-2、EP-3、MC-55A、シャビット、アルシャンジュ |
戦術電子攻撃機は戦闘機に近い速度と運動性を持ち、味方の戦闘機や攻撃機と同じ空域へ進出できる。一方、スタンドオフ型と情報収集型は旅客機、輸送機、ビジネスジェットを母体とする例が多い。速度では劣るが、長時間滞空でき、複数の専門員と大型の受信・処理装置を搭載できる。
私は、2026年の電子戦機を「最強」という一語で並べるべきではないと考える。敵防空網の扉を蹴破るEA-18Gと、遠方から電波秩序そのものを崩すEA-37B、平時から相手の発信癖を記録するRC-135は、同じ電磁波領域で戦っていても役割が違うからだ。
電子戦機とは何か|電子攻撃機と電子偵察機の違い
- 電子戦は大きく、電子攻撃、電子防護、電子戦支援に分けられる
- 電子攻撃は、妨害電波や欺瞞信号を用いて敵のレーダー、通信、データリンク、航法装置などの機能を低下させる行為である
- EA-18GやEA-37Bが代表例だ
- 対レーダーミサイルを併用し、敵防空網を物理的に破壊する任務へつながる場合もある
電子戦は大きく、電子攻撃、電子防護、電子戦支援に分けられる。
電子攻撃は、妨害電波や欺瞞信号を用いて敵のレーダー、通信、データリンク、航法装置などの機能を低下させる行為である。EA-18GやEA-37Bが代表例だ。対レーダーミサイルを併用し、敵防空網を物理的に破壊する任務へつながる場合もある。
電子戦支援は、敵が発した電波を受信し、種類、方位、位置、運用パターンを分析する機能である。RC-135、RC-2、EP-3などは、この情報収集を主目的とする。収集データは、敵レーダーの識別、妨害波形の作成、対レーダーミサイルの標的設定に使われる。
つまり、電子情報収集機は「耳」、電子攻撃機は「声」と「拳」に近い。耳がなければ妨害すべき周波数も敵レーダーの位置も分からず、声と拳がなければ得られた情報を戦場で優勢へ変えられない。
本稿では、純粋な早期警戒管制機、一般戦闘機の自衛用電子戦装置、地上配備の妨害装置は一覧から外した。各国で名称が統一されていないため、能動妨害を主とする機体と、電波情報収集を主とする機体を分けて掲載する。
世界の主要電子戦機一覧【2026年版】
- 公開情報で2026年時点の存在と役割を確認しやすい主要機は次の通りである
- 機数や妨害周波数、出力、探知距離の多くは非公表であり、推定値は比較から外した
- 国・地域 機体 主分類 2026年時点の状況 要点 ————— 米国 EA-18Gグラウラー 戦術電子攻撃 運用中 艦上運用可能
- ロシアのIl-22PPも、侵攻後の稼働機数や即応状態を独立に確認できないため、戦力数を断定しない
公開情報で2026年時点の存在と役割を確認しやすい主要機は次の通りである。機数や妨害周波数、出力、探知距離の多くは非公表であり、推定値は比較から外した。
| 国・地域 | 機体 | 主分類 | 2026年時点の状況 | 要点 |
|---|---|---|---|---|
| 米国 | EA-18Gグラウラー | 戦術電子攻撃 | 運用中 | 艦上運用可能。NGJ-MBが初期作戦能力を獲得 |
| オーストラリア | EA-18Gグラウラー | 戦術電子攻撃 | 12機を運用 | 米国外で唯一の運用国 |
| 米国 | EA-37Bコンパスコール | スタンドオフ電子攻撃 | 配備移行中 | EC-130Hの任務システムをG550系機体へ移植 |
| 中国 | J-16D | 戦術電子攻撃 | 運用中と判断できる公表状況 | J-16系複座機。空軍の電子戦随伴機 |
| 中国 | J-15D/J-15DT | 艦載電子攻撃 | 艦上運用段階 | 福建で電磁カタパルト発艦訓練を公表 |
| 台湾 | C-130HE | スタンドオフ電子攻撃・情報収集 | 運用中 | 台湾空軍唯一の専用電子戦機 |
| ドイツ | トーネードECR | 防空制圧・電子偵察 | 運用中 | 敵レーダー探知とHARM運用を担う |
| イタリア | トーネードECR | 防空制圧・電子偵察 | 運用中 | 第6航空団で運用 |
| ドイツ | ユーロファイターEK | 電子戦・防空制圧 | 開発・改修中 | トーネードECR後継。2030年前後の認証を計画 |
| トルコ | HAVA SOJ | スタンドオフ電子攻撃 | 開発・取得中 | 4システムを計画 |
| ロシア | Il-22PP | スタンドオフ電子攻撃 | 運用報告あり、詳細不明 | 旧式機体を母体とする大型妨害機 |
| 米国 | RC-135V/Wリベットジョイント | SIGINT・ELINT | 運用中 | 電波の探知、識別、位置標定、情報配信 |
| 英国 | RC-135Wエアシーカー | SIGINT・ELINT | 3機を運用 | 米国と共通基盤で運用 |
| 日本 | RC-2 | 電波情報収集 | 運用・量産取得中 | YS-11EB後継。C-2を母体とする |
| 日本 | EP-3 | 電子情報収集 | 運用中 | 海上自衛隊のP-3C系電子偵察機 |
| 日本 | UP-3D | 電子戦訓練支援 | 運用中 | 電子攻撃訓練で妨害役を担当 |
| オーストラリア | MC-55Aペレグリン | ISREW | 導入・試験中 | 2026年1月に初号機受領、4機計画 |
| イスラエル | G550シャビット | SIGINT・ELINT | 運用中 | ビジネスジェット型の長時間情報収集機 |
| フランス | アルシャンジュ | SIGINT・ELINT | 飛行試験中 | Falcon 8X母体、3機を計画 |
| スウェーデン | S 102Bコルペン | SIGINT | 運用中 | Gulfstream IV系の電波情報収集機 |
| 韓国 | 改良型白頭/Baekdu-II | SIGINT・FISINT | 配備拡充中 | 北朝鮮のレーダー・通信・計装信号を収集 |
中国のY-8/Y-9系列電子対抗機はY-9G、GX系列など呼称が資料によって揺れるため、確定一覧へ無理に加えなかった。ロシアのIl-22PPも、侵攻後の稼働機数や即応状態を独立に確認できないため、戦力数を断定しない。

EA-18Gグラウラー|攻撃編隊へ随伴できる電子戦機
- EA-18Gグラウラーは、F/A-18Fスーパーホーネットを基礎とする米海軍の複座電子攻撃機である
- 空母から発着でき、戦闘機部隊と同じ速度域で行動しながら、敵レーダーと通信の探知・妨害、防空制圧支援を行う
- 主な装備はAN/ALQ-218受信システム、AN/ALQ-99妨害ポッド、後継のAN/ALQ-249次世代ジャマーである
- 米海軍は2024年12月、次世代ジャマー中帯域型の初期作戦能力獲得を宣言した
EA-18Gグラウラーは、F/A-18Fスーパーホーネットを基礎とする米海軍の複座電子攻撃機である。空母から発着でき、戦闘機部隊と同じ速度域で行動しながら、敵レーダーと通信の探知・妨害、防空制圧支援を行う。
主な装備はAN/ALQ-218受信システム、AN/ALQ-99妨害ポッド、後継のAN/ALQ-249次世代ジャマーである。米海軍は2024年12月、次世代ジャマー中帯域型の初期作戦能力獲得を宣言した。中帯域型はAESA技術とソフトウェア制御を用い、従来のALQ-99より高い指向性、更新性、同時対処能力を狙う装備である。最初の実戦配備と戦闘使用は、空母エイブラハム・リンカーンに展開したVAQ-133によって行われたと米海軍が説明している。(出典1)
グラウラーの強みは、妨害だけで任務が完結しない点にある。脅威電波を探知し、位置を絞り、味方へ共有し、必要ならAGM-88系列の対レーダーミサイルで防空システムを攻撃できる。いわば、敵レーダーの目を曇らせるだけでなく、見つけた目そのものを潰す選択肢を持つ。
オーストラリア空軍も12機を第6飛行隊で運用する。2019年に初期作戦能力を獲得しており、米国外でグラウラーを保有する唯一の国である。(出典6)同国はF-35A、E-7A、P-8Aなどと組み合わせ、インド太平洋での情報共有と長距離作戦を重視している。
EA-37Bコンパスコール|EC-37Bから名称が変わった理由
- EA-37Bコンパスコールは、Gulfstream G550系の機体を母体とする米空軍の次世代電子攻撃機である
- 開発段階ではEC-37Bと呼ばれたが、米空軍は2023年10月27日付でEA-37Bへ改称した
- 名称のEは特殊電子装備、Aは攻撃任務を示し、通信やレーダーへの能動的な電子攻撃任務を明確化するための変更である
- (出典3) EA-37Bは、EC-130Hコンパスコールで実績を積んだ任務システムを、より高速・高高度・長航続のビジネスジェットへ再搭載する計画である
EA-37Bコンパスコールは、Gulfstream G550系の機体を母体とする米空軍の次世代電子攻撃機である。開発段階ではEC-37Bと呼ばれたが、米空軍は2023年10月27日付でEA-37Bへ改称した。名称のEは特殊電子装備、Aは攻撃任務を示し、通信やレーダーへの能動的な電子攻撃任務を明確化するための変更である。(出典3)
EA-37Bは、EC-130Hコンパスコールで実績を積んだ任務システムを、より高速・高高度・長航続のビジネスジェットへ再搭載する計画である。米空軍は10機の導入を進め、EC-130Hを段階的に退役させている。(出典4)
EA-18Gとの違いは、敵防空圏へ戦闘機と一緒に突入するより、脅威圏外から広い範囲へ作用する設計思想にある。通信、データリンク、指揮統制、レーダーなどを対象に、味方の航空・地上・特殊作戦を支援する。高速なG550系機体へ移ることで、展開速度、運用高度、航続性能、整備効率の改善も見込まれる。
2026年1月には欧州で初のロードショーを実施し、米空軍は運用サービスへの移行を公表した。一方で、部隊全体の初期作戦能力化とEC-130Hからの完全移行は段階的に進んでいる。(出典5)
私はEA-37Bを、2026年の電子戦機トレンドを最も象徴する一機と見る。大型輸送機へ人員と装置を詰め込む時代から、ビジネスジェットの速度・高度・航続力を使い、ソフトウェア中心の任務システムを迅速に再配置する時代へ移ったからだ。
J-16D|中国空軍の戦術電子戦機
- J-16Dは、中国空軍のJ-16複座戦闘機を基礎とする電子戦型である
- 翼端の電子支援装置と主翼下の大型電子戦ポッドが目立つが、妨害周波数、出力、搭載システム名は公表されていない
- 中国の国営報道はJ-16Dを電子戦機として継続的に紹介し、2025年9月の軍事パレードではJ-20、J-35Aなどとともに飛行した
- (出典9)公開行事への反復参加だけで即応性の全容は分からないが、少なくとも試作展示だけの段階を越え、部隊運用を前提とした存在になったと判断できる
J-16Dは、中国空軍のJ-16複座戦闘機を基礎とする電子戦型である。翼端の電子支援装置と主翼下の大型電子戦ポッドが目立つが、妨害周波数、出力、搭載システム名は公表されていない。
中国の国営報道はJ-16Dを電子戦機として継続的に紹介し、2025年9月の軍事パレードではJ-20、J-35Aなどとともに飛行した。(出典9)公開行事への反復参加だけで即応性の全容は分からないが、少なくとも試作展示だけの段階を越え、部隊運用を前提とした存在になったと判断できる。
任務はEA-18Gに近く、攻撃編隊への随伴、敵防空レーダーの探知・妨害、防空制圧支援が中心とみられる。対レーダーミサイルを含む攻撃兵器を搭載できる可能性も高い。ただし、中国側は詳細を公開しておらず、グラウラーとの探知距離や妨害性能を数値で比べることはできない。
[内部リンク候補: target_slug=j16-fighter-complete-guide|アンカー=J-16戦闘機とJ-16Dの詳細]
[内部リンク候補: target_slug=plaaf-fighter-jet-list|アンカー=中国空軍の戦闘機一覧]
J-15D/J-15DT|中国空母に加わった電子戦型
- 中国海軍のJ-15Dは、艦上戦闘機J-15系列の複座電子戦型である
- 2024年の中国国際航空宇宙博覧会ではJ-15Dの名称で公開され、電子戦機として編隊飛行を行った
- (出典10) さらに2025年11月、中国軍公式メディアは、空母福建の実兵力訓練で「J-15DT電子戦機」が電磁カタパルト発艦と着艦訓練を行ったと報じた
- (出典11)J-15DとJ-15DTの名称関係には不明点が残るが、少なくともカタパルト対応電子戦型が福建の航空団へ組み込まれつつあることは確認できる
中国海軍のJ-15Dは、艦上戦闘機J-15系列の複座電子戦型である。2024年の中国国際航空宇宙博覧会ではJ-15Dの名称で公開され、電子戦機として編隊飛行を行った。(出典10)
さらに2025年11月、中国軍公式メディアは、空母福建の実兵力訓練で「J-15DT電子戦機」が電磁カタパルト発艦と着艦訓練を行ったと報じた。(出典11)J-15DとJ-15DTの名称関係には不明点が残るが、少なくともカタパルト対応電子戦型が福建の航空団へ組み込まれつつあることは確認できる。
これは中国海軍にとって大きな変化である。遼寧・山東の航空団はJ-15戦闘機中心だったが、福建ではJ-35ステルス戦闘機、KJ-600早期警戒機、J-15T、J-15DTを組み合わせる方向が見える。艦載電子戦機は、空母打撃群が陸上基地の支援から離れて行動する際、敵艦隊のレーダーや防空網へ圧力をかける役を担う。
帝国海軍の空母航空隊が「何機の攻撃機を甲板へ並べるか」で打撃力を測った時代から、現代空母は「何種類の電波を甲板から支配できるか」で戦力が決まる。J-15DTの登場は、中国空母が単なる艦載戦闘機の運搬船から、情報・警戒・妨害を自己完結させる航空基地へ近づいていることを示す。

トーネードECRとユーロファイターEK|欧州の世代交代
- ドイツとイタリアは、トーネードECRを防空制圧と電子偵察に使用している
- ECRは敵レーダーの放射を探知・識別し、AGM-88 HARMで攻撃する能力を持つ
- EA-18Gのような広範な専用妨害機とは性格が異なるが、敵防空網を無力化する電子戦航空戦力として重要である
- (出典13、15) 問題は機体の老朽化である
ドイツとイタリアは、トーネードECRを防空制圧と電子偵察に使用している。ECRは敵レーダーの放射を探知・識別し、AGM-88 HARMで攻撃する能力を持つ。EA-18Gのような広範な専用妨害機とは性格が異なるが、敵防空網を無力化する電子戦航空戦力として重要である。(出典13、15)
問題は機体の老朽化である。ドイツは15機のユーロファイターを電子戦型「ユーロファイターEK」へ改修し、トーネードECRの任務を引き継ぐ計画を進めている。Airbusは2030年前後のNATO認証を目標としており、SaabのArexis電子戦システムと対レーダー攻撃能力を統合する。(出典14)
欧州では大型専用機より、既存戦闘機へ電子戦装置と防空制圧兵器を統合する流れが強い。
MC-55Aペレグリン|豪州が導入するISREW機
MC-55Aペレグリンは、Gulfstream G550を母体とするオーストラリアの情報・監視・偵察・電子戦機である。豪州政府は4機を計画し、2026年1月に初号機が到着した。第10飛行隊が南オーストラリア州エディンバラ基地で運用準備を進め、同年には運用試験も始まった。(出典7、8)
MC-55AはEA-18Gの代替ではない。敵防空圏へ随伴するより、長時間滞空し、複数種類の信号を収集・融合し、部隊へ脅威警報と行動可能な情報を届ける役割が中心である。オーストラリアは、戦術電子攻撃をEA-18G、広域情報収集をMC-55A、早期警戒管制をE-7A、海洋監視をP-8AとMQ-4Cに分担させる構成を整えている。
RC-135V/WとRC-135W|米英の空飛ぶ電波情報拠点
RC-135V/Wリベットジョイントは、米空軍の大型SIGINT機である。広い電磁スペクトラムの信号を探知、識別、位置標定し、情報をほぼリアルタイムで他部隊へ配信する。(出典18)
英国は同系統のRC-135Wを「エアシーカー」として3機運用する。第51飛行隊が担当し、米国のシステム改修や訓練基盤と高い相互運用性を持つ。英国空軍は2035年までの運用を示しており、2026年にも北欧や欧州で活動を続けている。(出典19)
RC-135は敵を直接妨害する機体ではない。しかし、平時からレーダーの周波数、走査方式、通信手順、部隊配置の変化を記録することで、危機時の電子戦計画を支える。電子戦機の性能は開戦日に突然生まれるものではなく、平時に蓄積した「敵の電波の履歴書」で決まるのである。
日本の電子戦機|RC-2・EP-3・UP-3Dと将来のスタンドオフ電子戦機
日本は複数の電波情報収集・訓練支援機を持つが、2026年時点でEA-18Gと同じ戦術随伴型の専用電子攻撃機を公表上は保有していない。
航空自衛隊のRC-2は、YS-11EBの後継となる電波情報収集機で、C-2輸送機を母体とする。防衛省は、遠距離目標と長時間の情報収集、受信周波数帯域の拡大、デジタル変調波への対応、多目標同時収集、処理自動化を能力向上点として挙げている。(出典20)大型の国産機体を使うため、搭載装置の更新余地と運用上の共通性にも利点がある。
海上自衛隊はP-3C系列のEP-3を電子情報収集に、UP-3Dを電子戦訓練支援に使用する。2025年にはEP-3、OP-3C、UP-3Dが米海軍EA-18Gと電磁機動戦訓練を実施した。(出典21)UP-3Dは訓練で艦艇や航空部隊に妨害環境を与える役割を持つが、これを直ちに実戦用の攻勢電子攻撃機と同一視すべきではない。
一方、防衛装備庁は2026年度、「スタンド・オフ電子戦機の妨害送信波形の最適化」や電子戦統制構想に関する検討を公示した。(出典22)これは完成機の配備を意味しないが、日本が脅威圏外からの妨害、複数部隊を統制する電子戦運用、波形の最適化を継続して研究している証拠にはなる。
私は日本の課題を、単純な「グラウラーを持っていないこと」ではなく、RC-2などが集めた電波情報を、戦闘機、艦艇、地上電子戦部隊、スタンドオフ兵器へどれだけ短時間で循環させられるかに見る。電子戦は機体単独の競技ではなく、収集から分析、妨害、攻撃までの時間を争うシステム戦だからだ。

フランス・トルコ・イスラエル|ビジネスジェット型が増える理由
フランスのアルシャンジュは、Falcon 8Xを母体とする次世代SIGINT機である。2025年7月に初飛行し、フランスは2030年までの計画期間に3機を導入する方針を示している。レーダー信号と通信信号の双方を探知・分析し、旧世代のTransall Gabrielを置き換える。(出典16)
トルコのHAVA SOJは、スタンドオフ電子支援・電子攻撃システムである。トルコ国防産業庁は4システムを空軍へ供給する計画を示しており、敵レーダー、通信、指揮統制へ脅威圏外から欺瞞・雑音妨害を行い、味方航空機の回廊を作る構想である。(出典17)
イスラエルのシャビットはGulfstream G500系を母体とするSIGINT機で、第122飛行隊が運用する。イスラエル空軍は、地上から発信される信号を収集し、遠距離でリアルタイムの情報を提供する任務を説明している。(出典23)
共通点は民間ビジネスジェットの転用である。高高度・長航続で、旅客機型より少ない支援で展開しやすい。
電子戦機はどれが最強なのか
任務別に見れば、評価は変わる。
攻撃編隊への随伴と艦上運用では、実戦経験、装備更新、同盟国との訓練基盤を含めてEA-18Gが基準となる。J-16Dは中国空軍に同種の選択肢を与え、J-15DTは中国空母航空団の欠けていた一片を埋めるが、公開情報だけで妨害性能を逆転評価することはできない。
広域のスタンドオフ電子攻撃では、EA-37Bが新世代の中心候補である。ただし、2026年はまだEC-130Hからの移行期であり、計画機数すべてが完全作戦化した状態ではない。HAVA SOJや日本の将来構想も、配備後の訓練、任務データ、他部隊との接続が整って初めて実力になる。
情報収集では、米英のRC-135系列が規模と運用経験で際立つ。しかし、特定正面へ最適化した日本のRC-2、韓国の白頭、台湾のC-130HEには、常時監視する地域と対象が明確という強みがある。電子戦では、世界中を飛べることと、隣国の電波変化を毎日追い続けることは別の価値である。
公開スペックだけでは比較できない理由
電子戦機の核心性能は、最高速度や航続距離ではない。どの周波数をどれだけ遠くから受信できるか、複数信号をどの速さで識別できるか、妨害波をどれだけ正確に狙えるか、敵の周波数変更へ何分で追従できるかが重要になる。
ところが、これらは作戦上の秘密である。公表されるポッド名やアンテナ形状だけでは、受信感度、実効放射電力、同時対処数、デジタル無線周波数メモリの処理能力、脅威ライブラリの質を比較できない。
電子戦は相手との相対評価でもある。強力な妨害装置も周波数変更、受動センサー、妨害源を狙うミサイルに万能ではない。逆に古い機体でも、最新の任務データを持てば価値を発揮する。
そのため、本稿では出力や探知距離の非公式推定をランキング化しなかった。確実に比較できるのは、任務、母体機、運用形態、公開された配備状況、他部隊との接続方法までである。
2026年以降の注目点
第一はEA-18Gの次世代ジャマー低帯域型、第二はEA-37Bの部隊移行である。機体だけでなく、人員・任務データ・訓練体系の移行完了が実戦力を左右する。
第三は、中国海軍のJ-15DT運用である。福建での発着実績は確認されたが、空母航空団がJ-35、KJ-600、J-15DTを日常的に組み合わせ、遠海で継続運用できるかが次の焦点になる。
第四は、日本のスタンドオフ電子戦機構想である。2026年度公示は研究・検討段階を示すにすぎない。母体機、搭載システム、部隊編成、配備時期は公表情報から断定できず、今後の予算資料と防衛装備庁の契約情報を追う必要がある。
よくある質問
EC-37BとEA-37Bは別の機体なのか
基本的には同じコンパスコール後継機を指す。開発中はEC-37Bと呼ばれたが、米空軍が2023年10月にEA-37Bへ改称した。2026年時点ではEA-37Bが正式名称である。
電子戦機と早期警戒管制機の違いは何か
早期警戒管制機は、自らレーダーを発信して航空目標を広範囲に探知し、味方機を指揮する。電子戦機は、敵の電波を受信・分析したり、妨害・欺瞞したりする。実際には受動センサーやデータ共有で機能が重なるが、主目的が異なる。
日本にEA-18Gのような電子戦機はあるのか
公表上、攻撃編隊へ随伴するEA-18G型の専用電子攻撃機はない。RC-2とEP-3は主に情報収集、UP-3Dは訓練支援を担う。防衛装備庁はスタンドオフ電子戦機に関する研究・検討を進めているが、2026年時点で配備済みとは確認できない。
電子戦機はミサイルで敵を攻撃できるのか
機種による。EA-18GやトーネードECRは対レーダーミサイルを運用し、敵防空システムを物理的に攻撃できる。RC-135やRC-2のような情報収集機は、基本的に自ら攻撃せず、収集情報を他の部隊へ提供する。
まとめ|電子戦機は敵の「見える・伝わる・決められる」を崩す
2026年の世界の電子戦機は、EA-18GやJ-16Dの戦術随伴型、EA-37BやHAVA SOJのスタンドオフ型、RC-135やRC-2、MC-55Aの情報収集型へ分けると理解しやすい。
米国はEA-18GとEA-37B、RC-135を組み合わせ、戦術妨害、広域電子攻撃、情報収集を別機種で担う。中国はJ-16Dに加え、J-15DTを空母福建で運用する段階へ進んだ。欧州はトーネードECRからユーロファイターEKへの移行を進め、フランス、トルコ、オーストラリアはビジネスジェット型の新機種を整備している。
日本はRC-2、EP-3、UP-3Dによる収集・訓練基盤を持ち、スタンドオフ電子戦機の研究を続ける。ただし、重要なのは専用機の有無だけではない。敵の電波を平時から記録し、脅威を識別し、最適な妨害波形を作り、戦闘機・艦艇・地上部隊へ間に合う速度で渡せるかが勝敗を分ける。
電子戦機とは、派手な電波を撒く飛行機ではない。敵の「見える」「伝わる」「決められる」を一つずつ奪い、味方が先に状況を理解して撃てる時間を買う航空機である。
参考資料
1. U.S. Naval Air Systems Command, Next Generation Jammer Mid-Band declares initial operational capability, 2025年1月6日 2. U.S. Navy, VAQ-131 conducts electromagnetic warfare training with the Japan Maritime Self-Defense Force, 2025年4月10日 3. U.S. Air Force 55th Wing, EC-37B redesignated as EA-37B, 2023年11月14日 4. U.S. Air Force 55th Wing, 43rd ECS Transitions to EA-37B, 2024年3月1日 5. U.S. Air Forces in Europe, EA-37B conducts first European roadshow, 2026年1月27日 6. Royal Australian Air Force, EA-18G Growler aircraft information 7. Australian Department of Defence, First MC-55A Peregrine arrives in Australia, 2026年1月24日 8. Royal Australian Air Force, MC-55A Peregrine aircraft informationおよび2026年運用試験公表資料 9. Xinhua, J-16D participates in the 2025 V-Day military parade, 2025年9月3日 10. Xinhua, Powering up China's flying shark J-15 carrier-based fighters, 2024年11月15日 11. China Military Online, Aircraft Carrier Fujian conducts first maritime live-force training, 2025年11月18日 12. Republic of China Air Force, C-130HE electronic warfare aircraft information, 2026年更新 13. Bundeswehr, Tornado aircraft and ECR mission information 14. Airbus, Eurofighter EK electronic combat programme information 15. Italian Air Force, Tornado IT-ECR aircraft information 16. Direction générale de l'armement, Premier vol de l'avion ARCHANGE, 2025年7月25日 17. Presidency of Defence Industries, HAVA SOJ Project information 18. U.S. Air Force, RC-135V/W Rivet Joint Fact Sheet 19. Royal Air Force, RC-135W Rivet Joint/Airseeker aircraft information 20. 防衛省「電波情報収集機(RC-2)の取得」 21. 海上自衛隊「日米共同電磁機動戦訓練」公表資料、2025年 22. 防衛装備庁「令和8年度 スタンド・オフ電子戦機の妨害送信波形の最適化及び第2段階並びに電子戦統制の構想に関する検討」 23. Israeli Air Force, 122 Squadron Shavit SIGINT mission information 24. U.S. Naval Air Systems Command, EP-3E ARIES II final deployment and decommissioning information, 2024–2025年 25. Swedish and specialist aviation public information on S 102B Korpen operations 26. 韓国の改良型白頭偵察機配備に関する2025年公表報道
参考資料・主な出典
U.S. Navy NAVAIR|EA-18G Growler|資料を確認
U.S. Air Force 55th Wing|EC-37BからEA-37Bへの名称変更|資料を確認
Royal Australian Air Force|EA-18G Growler|資料を確認
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