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模型店の飛行機の棚で、F-35の箱が何種類も並んでいるのを見たことがあると思う。どれもグレーの同じような機体が描かれていて、違いがよくわからない。それもそのはずで、タミヤだけでもF-35のキットは、A型・B型・C型の3つの型と、1/72・1/48の2つの縮尺の組み合わせで6種類ある。さらに1/72のF-35Bには、発売年の違う2つのキットまである。
F-35の実機の性能を比べた記事はたくさんあるが、この記事で比べたいのは、模型として「どれを買うか」だ。実機の強さではなく、自分が作りたい型、棚に置ける大きさ、キットの作りで選ぶ。結論から言うと、迷ったらタミヤ1/72のF-35Aでいい。ただ、型と縮尺の違いを知っておくと、自分にぴったりの1機が選べるようになる。
- 迷ったらタミヤ1/72のF-35A(60792)。航空自衛隊のマーキングが入っていて、部品も少なく、いちばん失敗しにくい
- 型は「どこで飛んでいるF-35が好きか」で選ぶ。三沢の空自ならA、護衛艦いずも・かがや岩国の海兵隊ならB、空母ならC
- 縮尺は、1/72が手のひらからA5の紙くらい、1/48がA4の紙くらい。C型は翼が大きいので、1/48だと横幅が27cmを超える
- 1/72のF-35Bは2種類ある。2020年の60791はイタレリ製の部品を使ったキット、2024年の60793はタミヤが自社で設計したキットで、選ぶなら60793
- B型の「垂直に降りてくる姿」と、C型の「翼を畳んだ姿」は、その型のキットでしか作れない。ここが型を選ぶいちばんの理由になる
結論:タミヤのF-35は6種類、こう選ぶ
まず、タミヤから出ているF-35のキットを一覧にしておく。
このほかに、2020年に出た1/72のF-35B(60791)がある。こちらはあとで詳しく書くが、中身はイタリアのイタレリというメーカーの部品で、2024年の60793とはまったく別のキットだ。
一覧を見ると、ひとつ面白いことに気づく。全長はどの型もほとんど同じなのに、C型だけ全幅がぐっと大きい。実機のC型は空母から飛び立つために主翼を大きくしてあり、その違いがそのまま模型の横幅に出ている。棚に並べたとき、C型だけ明らかに翼が大きく見えるはずだ。

まず実機の違い:A・B・Cはどこが違うのか
模型を選ぶ前に、実機の3つの型の違いをざっと押さえておく。ここがわかると、キットの箱を見ただけでどの型かがわかるようになる。
| 型 | どこから飛ぶか | 見分けるところ | 日本との関係 |
|---|---|---|---|
| F-35A | 普通の滑走路 | 背中に空中給油の受け口、左の肩に機関砲 | 航空自衛隊の主力。三沢基地などに配備 |
| F-35B | 短い滑走路、艦の甲板、垂直着陸 | 背中に大きなリフトファンの扉、下に曲がるノズル | 航空自衛隊が新田原基地に配備。護衛艦いずも・かがで運用する計画。岩国の米海兵隊も |
| F-35C | 空母(カタパルトで発艦、ワイヤーで着艦) | 大きな主翼と尾翼、折りたためる翼端、頑丈な前脚 | 岩国の米海軍の艦載機部隊 |
A型は、空軍向けの普通の戦闘機だ。F-35の中でただ1つ機関砲を機体の中に持っていて、左の肩のあたりに小さなふくらみがある。航空自衛隊が最も多く導入している型でもある。航空自衛隊のF-35A/Bの配備状況は航空自衛隊のF-35A/B完全解説で書いた。
B型は、短い距離で飛び立ち、垂直に降りてこられる型だ。コクピットのすぐ後ろにリフトファンという大きなファンを積んでいて、その扉が背中にある。エンジンのノズルも下向きに曲がる。この仕組みのおかげで、護衛艦いずも・かがのような空母ほど大きくない艦でも運用できる。いずも型の改修の話はいずも型護衛艦の解説にまとめた。
C型は、空母のための型だ。カタパルトで打ち出され、ワイヤーに引っかけて止まるので、脚が頑丈で、主翼も大きい。艦の上で場所を取らないように、翼の先が折りたためる。同じF-35なのに別の飛行機と呼ばれる理由はF-35Cの解説で詳しく書いた。
模型を作るときに覚えておきたいのは、空中給油の受け方も型で違うことだ。A型は背中の受け口で給油機のブームを受け、B型とC型は機首の横から給油用のプローブを伸ばす。キットの組立説明書を見ていて、背中に小さな扉があればA型だ。この違いは空中給油の仕組みで図にしている。
型で選ぶ:どこで飛んでいるF-35が好きか
型を選ぶいちばん簡単な方法は、「どこで飛んでいるF-35が好きか」で決めることだ。
航空自衛隊が好きならA型
航空自衛隊のF-35を作りたいなら、A型を選ぶ。とくにタミヤ1/72のF-35A(60792)は、航空自衛隊の部隊マークが入ったマーキングが2種類ついている。カエルのマークの第301飛行隊と、オジロワシのマークの第302飛行隊で、どちらも青森県の三沢基地でF-35Aを飛ばしている部隊だ。航空祭で見た機体を、そのまま自分の手で作れる。この秋冬の航空祭の日程は航空祭ガイドにまとめた。
1/72のF-35Aは、部品の数を1/72に合わせて抑えてあり、エンジンのノズルの部品は1/48版の約3分の1しかない。最初の1機としていちばんすすめやすいキットだ。
1/48のF-35A(61124)は9種類のマーキングを選べ、兵装庫の扉を開けた状態でも閉じた状態でも作れる。電波を吸収する塗料の継ぎ目の模様もデカールで再現できるので、大きく作り込みたい人に向いている。
護衛艦いずも・かがが好きならB型
護衛艦いずもやかがの改修に心を動かされた人には、B型がいい。B型のいちばんの見どころは、垂直に降りてくる姿を作れることだ。リフトファンの扉を開け、ノズルを下に向け、スタンドの上に浮かせて飾ると、それだけで棚の上の主役になる。
1/72なら2024年の60793、1/48なら61125を選ぶ。1/48のF-35Bは、エンジンのノズルを0度(駐機)、30度(短距離離陸)、84度(垂直着陸)の3つの角度から選んで組み立てられ、垂直着陸の形はスタンドで飾れる。
ひとつ残念なのは、航空自衛隊のF-35Bのマーキングが入ったキットを、この記事を書いた時点では見つけられなかったことだ。空自のF-35Bは2025年に新田原基地への配備が始まったばかりなので、そのうちキットやデカールが出てくると思う。今B型を作るなら、米海兵隊やイギリス、イタリアの機体を選ぶことになる。F-35Bと中国の艦載機J-35の違いはF-35B vs J-35で比べた。
空母が好きならC型
アメリカ海軍の空母や、艦載機が好きな人にはC型だ。C型の見どころは、翼端を折りたたんだ姿と、着艦用のフックだ。タミヤのC型は、1/48も1/72も翼端を折りたたんだ状態と広げた状態を選べる。1/48の61127は、完成したあとでも差し替えられる。
日本の空で見られるC型もある。1/72の60794には、山口県の岩国基地にいる米海軍の艦載機部隊VFA-147のマーキングが入っている。岩国の航空祭で見たことがある人なら、こちらを選ぶ楽しみがある。
縮尺で選ぶ:1/72と1/48、どちらにするか
型が決まったら、次は縮尺だ。
| 1/72 | 1/48 | |
|---|---|---|
| 完成サイズの目安 | A5の紙くらい(C型はやや横に広い) | A4の紙くらい(C型は横幅27cm超) |
| 部品の多さ | 少なめ | 多め |
| 作り込める細かさ | ほどほど | コクピットや兵装庫の中まで見せられる |
| 置き場所 | 本棚の一角で足りる | 棚の1段を使うつもりで |
| 向いている人 | 最初の1機、何機も並べたい人 | 1機をじっくり作り込みたい人 |
最初の1機なら、私は1/72をすすめる。完成までの時間が短く、置き場所にも困らない。1/72のF-35Bでも部品はおよそ155点で、1/48に比べればずっと気楽だ。最近のタミヤの1/72は部品の合いがとても良く、小さいから難しいということもない。
1/48は、F-35をじっくり作り込みたい人のためのものだ。兵装庫の扉を開けて、中の配管や配線、ミサイルや爆弾まで見せられる。ただ、ジェット戦闘機は全長が長いので、1/48だと30cmを超える。カラーボックスの奥行きは30cm弱なので、飾る場所の奥行きを先に測っておいたほうがいい。
1/72で1機作ってから、同じ型を1/48でもう一度作るのもいい。同じ機体を2回作ると、自分の腕が上がっているのがはっきりわかる。縮尺の選び方の考え方は、戦闘機プラモデル初心者のおすすめでも詳しく書いた。
同じ「タミヤ1/72 F-35B」が2つある理由
F-35のキット選びでいちばん迷いやすいのが、1/72のF-35Bだ。タミヤのウォーバードコレクションには、F-35Bが2つある。
| 60791(No.91) | 60793(No.93) | |
|---|---|---|
| 発売 | 2020年 | 2024年8月 |
| 部品の生まれ | イタレリ製(2019年に作られたキット) | タミヤが自社で設計 |
| 作れる姿 | 駐機の状態が中心 | 垂直着陸やホバリングの状態(リフトファンなどの扉は開いた形) |
| マーキング | 岩国の米海兵隊機2種 | 米海兵隊3種、イギリス1種、イタリア1種 |
| こんな人に | すでに手元にある人、店で見つけた人 | 飛んでいる姿を飾りたい人、初めての人 |
60791は、イタレリが2019年に作ったキットの部品を使い、箱と説明書、パイロットの人形、デカールをタミヤが用意した製品だ。見た目はタミヤの箱でも、中身の生まれはイタリアのキットになる。
一方、2024年の60793は、タミヤが自社で設計した新しいキットだ。2023年に出したタミヤ自身の1/72 F-35Aの流れをくんでいて、海外の模型雑誌のレビューでも、部品の合いの良さが高く評価されている。ホバリングの姿で飾るためのスタンドがつき、脚は地面に着いて縮んだ状態と、浮いて伸びた状態の2種類が入っている。
選ぶなら60793だ。ただし、60793はリフトファンなどの扉を開けた、垂直に降りてくる形で作るように設計されている。扉をすべて閉じた、普通の駐機の姿のF-35Bが欲しいなら、1/48の61125で駐機の形を選ぶといい。
この2つの例からわかるのは、同じメーカーの同じシリーズでも、品番と発売年は必ず確かめたほうがいいということだ。模型の世界では、他のメーカーの部品を自社の箱に入れて売ることは珍しくない。箱の側面の品番と発売年を見るくせをつけておくと、買ったあとで「思っていたのと違う」となりにくい。
作る前に知っておきたいこと
色はほぼ一色、だから初心者に向いている
F-35は、機体のほとんどが暗いグレー一色で塗られている。迷彩のような複雑な塗り分けがないので、塗装はかなり楽だ。タミヤのキットには、キャノピーの透明部品に貼るマスキングシールもついている。
F-35らしさを出すなら、デカールの使い方が大事になる。実機には、電波を吸収する素材の継ぎ目が、少し色の違う線として見える。タミヤの1/48のF-35Aには、この模様を再現するデカールが入っている。全部貼るのは根気がいるが、貼ると一気に実機らしくなる。
道具をそろえるなら、ミリタリープラモデルの道具一式にまとめた。最低限、ニッパーと接着剤があれば組み立ては始められる。
兵装は、最初は機内にしまう
タミヤのF-35は、どの型も兵装の付け方を3つから選べる。ミサイルや爆弾を機内の兵装庫にしまったステルスの形、主翼の下に空対空ミサイルを付けた形、主翼の下を兵装で埋めたビーストモードの形だ。
最初の1機は、兵装を機内にしまった形で作るのがいい。部品が少なく、F-35らしいすっきりした形になる。ビーストモードは見栄えがいいが、そのぶん部品も塗る場所も増える。2機目で挑戦すればいい。
初めての人がつまずきやすい3つのところ
F-35のキットは作りやすいが、それでも初めての人が手を止めやすいところが3つある。
1つ目は、キャノピーやリフトファンの扉まわりのマスキングだ。F-35の扉や開口部は、ステルスのために縁がぎざぎざの形をしている。この縁に沿ってマスキングテープを貼るのは根気がいる。付属のマスキングシールを使い、足りないところだけテープを細く切って貼ると楽になる。
2つ目は、デカールの多さだ。F-35は機体に小さな注意書きの文字がたくさんあり、キットのデカールもそのぶん多い。全部貼ろうとすると、ここがいちばん時間を食う。最初の1機は、国籍マークや部隊マーク、機番のような大きなものだけでも十分それらしくなる。
3つ目は、塗る順番だ。最近のタミヤのF-35は、主翼まで一体になった大きな上下の部品に、ほかの部品を挟み込んでいく作りになっている。組み立てやすい反面、組んでから塗ると脚の収納庫や兵装庫の中が塗りにくい。中を見せる部分は、組む前に先に塗っておくといい。
2機目をどうするか:3つの型を並べる楽しみ
1機目ができたら、2機目は別の型にしてみてほしい。F-35は、3つの型を並べたときにいちばん面白くなる飛行機だと思う。
おすすめは、1/72で3つの型をそろえることだ。タミヤの1/72のF-35は、A型が2023年、B型が2024年、C型が2025年と、ここ数年で続けて出ているので、並べても作りの雰囲気がそろう。完成サイズで計算すると、3機を横に並べて幅は約48cm、奥行きは約22cmになる。本棚の1段に収まる大きさだ。
| 並べ方 | 見どころ |
|---|---|
| A型とB型 | 背中の扉の有無、機関砲のふくらみ |
| B型とC型 | 同じ艦の上で飛ぶ機体でも、翼の大きさがまるで違う |
| 3つの型すべて | 空軍、海兵隊、海軍のそれぞれの事情が形に出ている |
B型だけはホバリングの姿でスタンドに載せ、A型とC型は脚を出して並べると、高さに変化がついて見栄えがいい。同じ縮尺で別の戦闘機と並べたくなったら、F-22と比べるのも面白い。2つのステルス機の違いはF-22 vs F-35で書いた。
空母の世代の違いを並べて楽しむなら、F-14プラモデルの選び方も参考にしてほしい。
買う前のチェックリスト
最後に、F-35のキットを買う前に確かめたいことをまとめておく。
- 型:作りたいのはA・B・Cのどれか。どこで飛んでいる機体が好きか
- 縮尺:1/72か1/48か。飾る場所の奥行きは足りるか
- 作りたい姿:駐機の姿か、B型のホバリングか、C型の翼を畳んだ姿か
- マーキング:作りたい部隊のマーキングが入っているか(空自ならA型の1/72が確実)
- 品番と発売年:同じ名前でも中身が違うことがある。1/72のF-35Bは60793を選ぶ
- 道具:ニッパーと接着剤はあるか。塗るなら機体色のグレーを用意する
タミヤ以外の選択肢
この記事ではタミヤを中心に比べたが、ほかのメーカーにも選ぶ理由のあるキットがある。
ハセガワは1/72のF-35Aを出していて、航空自衛隊の機体の限定版をたびたび発売している。臨時F-35飛行隊の機体や、第301飛行隊の50周年記念の機体などだ。限定版は数が少なく、売り切れると手に入りにくいので、空自ファンは見つけたときが買いどきになる。
塗装をしたくない人には、韓国のアカデミーが出している1/72のF-35Aがある。部品があらかじめ色分けされたキットで、塗らなくてもそれらしく仕上がる。一部に接着剤が要る場合があるので、買う前に説明を確かめておきたい。子どもと一緒に作る1機目にも向いている。
よくある質問
F-35AとF-35B、模型で見分けられる?
見分けられる。いちばんわかりやすいのは背中だ。B型はコクピットのすぐ後ろにリフトファンの大きな扉があり、A型はその位置に扉がない。A型は代わりに、背中に空中給油の受け口の小さな扉があり、左の肩に機関砲のふくらみがある。
航空自衛隊のF-35Bは作れる?
この記事を書いた時点では、空自のF-35Bのマーキングが入ったキットは見つけられなかった。空自のF-35Bは配備が始まったばかりなので、キットやデカールが出るのを待ちたい。空自の機体を今すぐ作りたいなら、A型の1/72(60792)かハセガワの限定版になる。
1/72と1/48、どちらが作りやすい?
部品が少ないぶん、1/72のほうが早く完成する。最近のタミヤの1/72は部品の合いが良いので、小さいから難しいということもあまりない。細かい作業が苦手なら、部品が大きい1/48のほうが扱いやすいと感じる人もいる。
実機のF-35を作っている日本の会社は?
航空自衛隊のF-35Aの一部は、三菱重工の工場で最終組み立てが行われてきた。どの日本企業がF-35のどこを担っているかはF-35を作る日本企業一覧で整理した。開発元のロッキード・マーチンについてはロッキード・マーチン株の解説で書いている。手元のF-35を眺めながら読むと、供給網の話がぐっと身近になる。
まとめ
- タミヤのF-35はA・B・C型×1/72・1/48の6種類。迷ったら1/72のF-35A(60792)から
- 型は「どこで飛んでいるF-35が好きか」で選ぶ。空自ならA、いずも・かがならB、空母ならC
- 1/72はA5の紙くらい、1/48はA4の紙くらい。C型は翼が大きく、1/48だと横幅27cmを超える
- 1/72のF-35Bは、2020年の60791(イタレリ製)と2024年の60793(タミヤ設計)がある。選ぶなら60793。ただし扉を開けた垂直着陸の形になる
- 買う前に、箱の品番と発売年を確かめる。同じシリーズでも中身の生まれが違うことがある
F-35は、見た目が地味だと言われることがある。けれど、3つの型を並べてみると、空軍、海兵隊、海軍のそれぞれの事情が、背中の扉や翼の大きさにはっきり表れているのがわかる。1機作ったら、ぜひ別の型をもう1機作って並べてみてほしい。同じF-35がまったく違う飛行機に見えてくるはずだ。
組み立ての長い時間のお供に。







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