自衛隊海上輸送群とは|LCU・LSVと南西諸島輸送の役割

自衛隊海上輸送群のLSVとLCUが島嶼部を結ぶイメージ

自衛隊海上輸送群とは、陸・海・空自衛隊の部隊、車両、装備品、弾薬、燃料、補給品を海上から運ぶため、2025年3月24日に新編された共同部隊である。海上自衛隊の呉地区で発足したが、主な乗組員には陸上自衛官も含まれ、陸自の装備運用と海自の艦艇運用を組み合わせる異例の編制となった。[S1]

配備される中心装備は、中型輸送艦LSVと小型輸送艦LCUである。LSVは本土や大規模な港から主要島嶼へ大量の車両・物資を運び、LCUは水深の浅い港湾や、条件が整えば砂浜に接近して荷下ろしする。さらに小さな島へは機動舟艇を組み合わせる構想であり、輸送距離と港湾条件に応じて船を使い分ける。[S3][S5][S6]

この記事の結論を先に言えば、自衛隊海上輸送群の価値は「何隻の輸送艦を持ったか」だけでは測れない。本土から主要島、主要島から小規模島嶼へと貨物をつなぐ海上物流網を、自衛隊が常設部隊として持ち始めたことに意味がある。

自衛隊海上輸送群のLSVとLCUが島嶼部を結ぶイメージ
LSVとLCUを組み合わせた海上輸送は、南西諸島の補給線を支える。

島嶼防衛は、ミサイルの射程だけでは成立しない。砲や発射機を島へ置くのは作戦の始まりにすぎず、弾薬、燃料、食料、整備部品を次の日にも運べて初めて、その装備は戦力であり続ける。

目次

自衛隊海上輸送群を簡単に整理

最初に押さえる結論

自衛隊海上輸送群の要点は次のとおりである。

項目内容
新編日2025年3月24日
発足地海上自衛隊呉地区
部隊区分陸・海・空自衛隊の共同の部隊
主な任務三自衛隊の部隊、車両、装備品、補給品などの海上輸送
指揮防衛大臣直轄。実任務では統合作戦司令官の指揮下で運用
主な艦種中型輸送艦LSV、小型輸送艦LCU、将来の機動舟艇
主な対象地域南西地域を含む島嶼部
主な拠点司令部・第1海上輸送隊は呉地区、第2海上輸送隊は阪神基地
人員の特徴陸上自衛官と海上自衛官が協力して艦艇を運用

防衛省は海上輸送群を「輸送任務を専門的に担う海上輸送部隊」と位置づけている。主に陸上自衛隊の部隊輸送を担う一方、海上自衛隊と航空自衛隊の輸送にも対応するため、陸自だけの部隊ではなく共同部隊とされた。[S1][S3]

新編行事は2025年4月6日に呉地区で行われた。この際、防衛大臣は海上輸送群を防衛大臣直轄の部隊と説明し、実際の任務では統合作戦司令官の指揮下で全自衛隊の輸送任務に当たると述べている。[S2]

私は、この指揮関係こそ海上輸送群を理解する鍵だと考える。船の所属を陸自か海自かという軍種の話だけで見ると、本質を外す。海上輸送群は、統合作戦司令部が組み立てる作戦に対し、必要な部隊と物資を軍種横断で運ぶ「統合兵站の実働部隊」なのである。

なぜ自衛隊に新しい海上輸送部隊が必要だったのか

南西諸島は距離が長く、島の条件も異なる

南西地域には、九州南端から沖縄本島、宮古列島、八重山列島へと多数の島が連なる。島ごとに港の水深、岸壁の長さ、荷役設備、空港の滑走路、保管能力が異なり、同じ輸送手段ですべてを賄うことは難しい。

航空輸送は速いが、輸送量と貨物寸法に制約がある。C-2輸送機やCH-47輸送ヘリコプターは緊急性の高い人員・物資の輸送に強い一方、車両、コンテナ、燃料、弾薬、整備器材を継続して大量に運ぶ場合、船舶の方が効率的である。防衛省も、航空機では輸送に適さない重装備や、一度に大量の物資を運ぶには海上輸送力が重要だと説明している。[S1]

展開する能力だけでなく、戦力を維持する能力が必要

南西諸島防衛では、部隊を一度送り込めば任務が終わるわけではない。部隊が活動を続けるには、次の物資を絶えず補給する必要がある。

  • 車両と火砲
  • 地対艦・地対空ミサイル関連器材
  • 弾薬
  • 燃料
  • 食料と水
  • 発電機と通信器材
  • 整備部品
  • 工事・復旧用資材
  • 医療器材

防衛力整備計画は、島嶼部への侵攻阻止に必要な部隊を南西地域へ迅速かつ確実に運ぶため、LSV、LCU、機動舟艇、C-2、KC-46A、CH-47、UH-2などの輸送アセットを整備する方針を示している。加えて、民間資金等活用事業によるPFI船舶で大量輸送力を補完する構想も含まれる。[S8]

ここで重要なのは、海上輸送群だけですべてを運ぶ計画ではない点である。自衛隊保有の船、航空機、ヘリコプター、民間船舶、港湾の荷役器材を一つの輸送体系として組み合わせる。海上輸送群は、その中で港湾条件の厳しい島へ踏み込む自前の海上輸送能力を担う。

自衛隊海上輸送群の編制と現在の保有艦

2026年7月時点で確認できる主要艦は、LSV「ようこう」1隻と、LCU「にほんばれ」「あまつそら」「あおぞら」の3隻である。

艦種艦名艦番号就役・授与式主な位置づけ
LSVようこう41012025年5月30日大量輸送を担う中型輸送艦
LCUにほんばれ41512025年4月6日浅い港湾・砂浜への輸送に対応
LCUあまつそら41522026年3月31日にほんばれ型2番艦
LCUあおぞら41532026年3月31日にほんばれ型3番艦

「あまつそら」と「あおぞら」は2026年3月31日に呉地区で自衛艦旗授与式が行われた。防衛省は、にほんばれ型を南西地域の主要島嶼間輸送に用い、水深の浅い島嶼部の港湾にも輸送できる船舶と説明している。[S4]

防衛省は2025年度末にLCU2隻を追加し、海上輸送群を約100名から約160名へ増強する計画を示していた。編制上はLSVを運用する第1海上輸送隊と、LCUを運用する第2海上輸送隊に分かれる。第2海上輸送隊は係留能力を考慮して2026年春までに海上自衛隊阪神基地へ移転し、防衛省の調達公告や同基地の公開行事でも同基地に所在することが確認できる。[S7][S13]

海上輸送群司令部とLSVを運用する第1海上輸送隊の基盤は呉地区に置かれる。呉は海自の主要基地であり、艦艇運用、教育、整備、補給の基盤を利用しやすい。新編初期にLSVとLCUの双方を呉へ集めたのも、部隊の練度向上を優先したためである。[S2]

LSV「ようこう」とは

LSVは大量輸送を担う中型輸送艦

「ようこう」は自衛隊海上輸送群が運用する中型輸送艦LSVの1番艦である。内海造船瀬戸田工場で建造され、2024年11月28日に進水、2025年5月30日に引き渡されて就役した。[S6][S12]

主要目は次のとおりである。

項目ようこう
艦種輸送艦LSV
全長約120メートル
約23メートル
基準排水量約3,500トン
試運転最大速力約15ノット
荷役方式右舷側の前後に設けた歩板装置を使用
船内貨物倉、車両通路、多層構造の居住区
操船支援バウスラスター1基

内海造船の説明によれば、「ようこう」は居住区前方に貨物倉、居住区下方に車両通路を持つ。貨物は艦首側と艦尾側の右舷に設けた歩板装置から積み下ろす。車両が自走して出入りするRORO船に近い構造であり、港湾で車両とコンテナを効率よく扱う設計である。[S6]

LSVの役割は本土と主要島を結ぶ幹線輸送

LSVの強みは、LCUより多くの車両や物資を一度に運べることにある。防衛省は艦ごとの詳細な標準搭載内訳を公開資料で一律に示していないため、特定の車種を何両積めると断定するのは避けるべきだが、少なくとも海上輸送群の中では大量輸送側を担当する。

想定される使い方は、九州・本州の輸送拠点から、沖縄本島や奄美大島など比較的大きな港を持つ主要島へ、車両、コンテナ、補給品をまとめて運ぶ形である。港に着いた後は、陸上輸送へ引き継ぐか、LCUや将来の機動舟艇へ積み替えて周辺の島へ送る。

私が「ようこう」を評価するうえで注目するのは、派手な揚陸能力ではなく、定期的な往復輸送に向いた商船的な構造である。南西諸島で必要なのは、一度だけ強襲上陸する船より、車両と貨物を積んで何度も往復できる船だ。右舷の前後ランプと車両通路は、その思想を形にしたものと見てよい。

LSVは砂浜へ直接乗り上げる船ではない

「ようこう」と「にほんばれ」の大きな違いは、ビーチング能力である。内海造船はLCUについて砂浜へ乗り付ける仕様を明記しているが、LSVの説明にはビーチング仕様がない。LSVは歩板装置を岸壁へ接続して荷役するため、基本的には利用可能な港湾を必要とする。[S5][S6]

したがって、LSVはどの離島にも直接入れる万能船ではない。大量輸送には強いが、水深、岸壁、荷役空間が確保された港が必要になる。この制約を補うのがLCUと機動舟艇である。

LCU「にほんばれ」型とは

LCUが浅瀬へビーチングして車両と物資を降ろす様子
LCUは条件が整えば船首ランプから車両を直接揚陸できる。

LCUは浅い港湾と砂浜への輸送を担う

「にほんばれ」は小型輸送艦LCUの1番艦である。LCUは一般にLanding Craft Utility、汎用揚陸艇を意味する略称だが、防衛省は新造艦を小型級船舶または輸送艦LCUと表記している。

にほんばれ型の主要目は次のとおりである。[S5]

項目にほんばれ型
艦種輸送艦LCU
全長約80メートル
約17メートル
基準排水量約2,400トン
試運転最大速力約15ノット
荷役方式艦首ランプ
船内貨物倉、多層構造の居住区
特徴ビーチングを想定した船型・構造・艤装

艦首には開閉式のドアとランプがあり、岸壁へ艦首を付けるか、条件が整った砂浜へ乗り付けて、車両を前方から直接出入りさせる。水深の浅い港湾へ入りやすく、LSVが使いにくい小規模港湾への輸送を担当する。[S4][S5]

LCUの価値は最終区間を自力でつなげること

物流では、大きな拠点間を結ぶ幹線輸送だけでなく、目的地まで届ける最終区間が難しい。南西諸島では、この最終区間が海になる。

大型の民間船やLSVが主要港まで大量の物資を運べても、そこから先の島に十分な岸壁がなければ貨物は止まる。LCUは、その止まりやすい区間をつなぐ船である。

例えば、主要島の港で車両やコンテナを受け取り、より小規模な島の浅い港へ運ぶ。港が損傷していても、海岸の勾配、海底地形、波浪、障害物、安全確保などの条件が整えば、ビーチングによる荷下ろしを検討できる。これは平時の定期輸送だけでなく、港湾被害を受けた状況で代替経路を作るうえでも意味がある。

ただし、砂浜ならどこでも上陸できるわけではない。海岸勾配、底質、潮位、波、進入経路、車両が走行できる地盤、敵の脅威など、多数の条件確認が必要となる。ビーチング能力は港を完全に不要にする魔法ではなく、利用可能な荷下ろし地点を増やす能力と理解すべきである。

LSVとLCUの違い

LSVとLCUの輸送能力と接岸方法を比較するイメージ
LSVは港湾で大量輸送、LCUは浅い港や砂浜への最終区間を担う。

LSVとLCUは大小の違いだけではない。輸送網の中で担当する区間が異なる。

比較項目LSV「ようこう」LCU「にほんばれ」型
防衛省の区分中型級船舶小型級船舶
主な役割大量・中長距離輸送小規模港湾・島嶼間輸送
全長約120メートル約80メートル
基準排水量約3,500トン約2,400トン
荷役口右舷前後の歩板装置艦首ランプ
港湾条件岸壁を基本とする浅い港湾に対応しやすい
ビーチング公開資料で仕様明記なし仕様として明記
輸送網での位置幹線支線・最終区間

私は、LSVとLCUを「大きい船と小さい船」とだけ説明するのは不十分だと考える。両者の関係は、長距離トラックと地域配送車に近い。LSVが主要拠点へまとめて運び、LCUが港湾条件の厳しい島へ分配する。この役割分担があって初めて、南西諸島の海上輸送網が面として機能する。

南西諸島ではどのように輸送するのか

本土から主要島を経て小規模島嶼へ物資を運ぶ海上物流網
海上輸送群は本土・主要島・小規模島嶼を段階的につなぐ。

台湾有事と南西諸島防衛

海上輸送群の運用を理解するには、輸送を一隻で完結させるのではなく、段階に分けて考えると分かりやすい。

第1段階 本土の集積拠点へ物資を集める

全国の駐屯地や補給処から、トラック、鉄道、民間輸送などを使って港湾へ車両・コンテナを集める。ここでは、何をどの順序で積むかが重要になる。到着後すぐ使う車両を奥へ積めば、荷下ろしに時間がかかるからだ。

第2段階 PFI船舶やLSVで主要島へ運ぶ

大量の車両とコンテナは、PFI船舶やLSVで主要港へ運ぶ。民間型の大型船は大量輸送に向き、LSVは自衛隊が直接運用することで任務上の柔軟性を確保する。

第3段階 LCUで主要島から周辺島嶼へ分配する

LCUは主要島で貨物を受け取り、浅い港湾を持つ島へ運ぶ。艦首ランプから車両を降ろせるため、クレーン設備が乏しい港でもRORO方式で荷役しやすい。

第4段階 機動舟艇でさらに小さな島へ運ぶ

防衛省は、LCUでも接岸が難しい小さな島への輸送を可能にするため、機動舟艇を配備する方針を示している。2025年11月の防衛大臣会見では、2026年度に輸送艇1隻を部隊配備し、その運用部隊を海上自衛隊奄美基地内に新編する予定が説明された。[S3]

つまり、構想上の輸送網は次のようになる。

本土の集積港 → PFI船舶・LSV → 主要島 → LCU → 小規模島嶼 → 機動舟艇 → 接岸条件の厳しい島

この構造は、一本の太い航路に頼るのではなく、複数の船種で貨物を分けて運ぶ分散型物流である。輸送量、距離、港の規模、脅威、天候に応じて経路を変えられる点が強みとなる。

なぜ海上自衛隊ではなく共同部隊なのか

陸上自衛官と海上自衛官が輸送艦へ車両を積み込む様子
共同部隊では陸自の装備運用と海自の艦艇運用を組み合わせる。

統合作戦司令部とは

船を運用するなら海上自衛隊の部隊にすればよいようにも見える。しかし、防衛省は海上輸送群を共同部隊とし、陸上自衛官を主要な乗組員として育成してきた。

理由の一つは、輸送対象の多くが陸自の部隊と装備だからである。陸上自衛官は車両、火砲、補給品、地上部隊の運用を理解している。一方、海上自衛官は航海、機関、通信、艦艇整備、安全管理に関する知見を持つ。両者を組み合わせれば、積む側と運ぶ側の知識を同じ部隊に持たせられる。[S1]

防衛省は2019年から、陸上自衛官を海上自衛隊の術科学校や部隊へ入校させ、航海、機関、整備、通信などの教育を進めてきた。海上輸送群には、大型車両の操縦手だけでなく、普通科、特科、機甲科など多様な職種出身者が配属されている。[S1]

もう一つの理由は、輸送対象が陸自に限定されないことだ。航空自衛隊の器材、海上自衛隊の補給品、共同作戦に必要な装備も運ぶ。軍種ごとに輸送船を持つより、統合作戦司令官の下で優先順位を付け、必要な場所へ配船する方が合理的である。

ただし、共同部隊にすれば自動的に統合が完成するわけではない。艦艇文化、整備手順、人事制度、資格、補給品管理、通信体系の違いを現場で擦り合わせる必要がある。海上輸送群は、新しい船を造る事業であると同時に、陸自隊員を船員として育て、三自衛隊の物流手順を統合する組織改革でもある。

「おおすみ」型輸送艦との違い

海上自衛隊の艦艇一覧

自衛隊には以前から海上自衛隊の「おおすみ」型輸送艦がある。では、なぜ新たにLSVとLCUが必要なのか。

「おおすみ」型は基準排水量8,900トン、全長178メートル、速力22ノットで、輸送用エアクッション艇LCACを2隻搭載する大型輸送艦である。人員・装備の海上輸送、水陸両用作戦、災害派遣などに対応できる。[S10]

一方、LSVとLCUは「おおすみ」型より小さく、より日常的な部隊輸送と島嶼間物流へ重点を置く。

項目おおすみ型LSV・LCU
所属海上自衛隊自衛隊海上輸送群
規模大型中型・小型
主な揚陸手段搭載LCAC自艦のランプ、LCUのビーチング
主な強み大規模輸送、水陸両用作戦、多目的運用分散輸送、浅い港湾、継続的な島嶼間輸送
運用思想大型プラットフォーム複数船種による輸送網

両者は競合する装備ではなく、補完関係にある。「おおすみ」型は大型輸送艦としてまとまった部隊を運び、LCACを使って沖合から揚陸できる。LSVとLCUは、より多くの航路へ分散し、港から港、島から島へ反復輸送する。

海上輸送群が運ぶ可能性のある装備

16式機動戦闘車と島嶼防衛

具体的な搭載計画は任務ごとに変わるが、海上輸送群は陸・海・空自衛隊の部隊と装備品を輸送する。南西地域への機動展開を考えれば、次のような貨物が対象になり得る。

  • 高機動車、トラック、燃料車
  • 16式機動戦闘車などの装輪車両
  • 地対艦・地対空誘導弾部隊の車両
  • レーダー、通信、指揮所器材
  • 工兵・施設部隊の重機
  • コンテナ化された弾薬、整備部品、糧食
  • 発電機、浄水器、医療器材
  • 航空自衛隊基地の復旧・支援器材

ただし、艦の搭載量だけで可否は決まらない。ランプの耐荷重、車両寸法、重心、甲板強度、固縛位置、危険物規則、荷役順序、到着港の道路条件まで確認する必要がある。

海上輸送群の弱点と課題

輸送艦は戦闘艦ではない。海上輸送群が新編されたからといって、南西諸島への輸送問題が解決したわけではない。

輸送艦そのものの防護力には限界がある

LSVとLCUの主目的は輸送であり、護衛艦のような強力な防空・対潜水艦戦能力を持つ船ではない。敵の航空機、対艦ミサイル、潜水艦、機雷、無人艇が活動する海域では、単独航行の危険が高い。

実戦で安全に使うには、海空優勢の確保、護衛艦艇、戦闘機、哨戒機、掃海部隊、電子戦、基地防空、航路監視などを組み合わせる必要がある。輸送艦の数だけを増やしても、航路を守れなければ物資は届かない。

港湾が使えなければ輸送効率が落ちる

LSVは基本的に岸壁を使う。LCUは浅い港や砂浜に対応できるが、ビーチングできる場所には限界がある。港湾が攻撃や災害で損傷した場合、航路啓開、障害物除去、応急修理、荷役器材の搬入が必要になる。

防衛力整備計画が大型クレーン、フォークリフト、コンテナトレーラー、揚陸支援システム、港湾整備を一体で重視しているのはこのためである。[S8]

船員と整備基盤の確保が必要

船は取得して終わりではない。航海、機関、通信、給養、整備、安全管理の要員を継続して育てる必要がある。海上勤務に慣れた陸上自衛官を増やし、海上自衛隊の教育・整備基盤と連携する仕組みを維持しなければならない。

2025年度末の増勢計画が約160名規模にとどまることを考えると、艦数増加に合わせた要員確保は今後も課題になる。省人化された設計であっても、複数艦を同時に動かし、交代要員を確保し、整備期間を回すには相応の人員が必要である。

積み替えは柔軟性と同時に遅延を生む

LSVからLCU、LCUから機動舟艇へ積み替える方式は、多様な島へ届けられる反面、荷役回数が増える。積み替えるたびに時間、人員、燃料、荷役設備が必要となり、事故や混乱の可能性も上がる。

輸送網を機能させるには、コンテナ規格、積載計画、貨物追跡、優先順位付け、港湾ごとの荷役訓練を平時から整える必要がある。私は、海上輸送群の成否は新造艦の性能より、貨物情報と荷役手順をどこまで標準化できるかで決まると見ている。

災害派遣と国民保護での役割

LCUが台風被害を受けた島へ救援物資を届ける様子
海上輸送力は災害派遣や国民保護でも重要な選択肢になる。

海上輸送群の主任務は自衛隊の部隊・装備品輸送だが、整備された輸送能力は災害派遣や国民保護にも活用できる。

大規模災害で港湾や道路が被害を受けた場合、LCUの浅い港湾への進入能力や車両を直接降ろせる艦首ランプは、重機、給水車、医療器材、食料、仮設資材を運ぶ手段となる。帰路では、状況に応じて被災者や要支援者の輸送を支援する可能性もある。

国民保護では、自衛隊の各種輸送アセットや民間船舶を住民避難に活用できるよう、政府・自治体・事業者が調整する方針が示されている。ただし、住民避難は自衛隊だけで完結する任務ではなく、自治体、海上保安庁、警察、消防、民間交通機関との役割分担が前提となる。[S9]

海上輸送群の艦が常に住民輸送へ割り当てられるとは限らない。有事には部隊展開と住民避難が同時に発生し、同じ港と船を取り合う可能性がある。そのため、PFI船舶や民間フェリーを含む輸送力全体を増やし、事前に優先順位と運航計画を詰めておく必要がある。

今後はLSV2隻・LCU4隻・機動舟艇4隻へ

防衛省の行政事業レビュー資料では、島嶼部への輸送機能を強化するため、LSV2隻、LCU4隻、機動舟艇4隻を取得する計画が示されている。[S11]

2026年7月時点ではLSV1隻、LCU3隻が確認できるため、計画どおりなら今後は次の増勢が焦点となる。

  • LSVの2番艦
  • LCUの4番艦
  • 機動舟艇4隻
  • 奄美基地を含む運用拠点の整備
  • 船員、整備員、司令部要員の増強
  • PFI船舶との共同訓練
  • 港湾への入港・荷役検証

ただし、取得数や配備時期は予算、契約、建造、要員、施設整備によって変更され得る。記事公開後も、防衛省予算資料、命名・進水式、引渡式、部隊改編の発表を追う必要がある。

海上輸送群はすでに、呉の司令部・LSV部隊と、阪神基地のLCU部隊へ分散配置されている。今後、奄美基地に機動舟艇の運用部隊が加われば、輸送船の規模と任務海域に応じた三層の拠点構成へ近づく。これは単なる係留場所の分散ではない。各船種を任務海域へ近づけ、平時から島嶼間航路、港湾、荷役条件を熟知するための配置である。

よくある質問

自衛隊海上輸送群は陸上自衛隊の部隊なのか

陸・海・空自衛隊の共同の部隊である。主要な乗組員には陸上自衛官が含まれるが、海上自衛官と協力して艦を運用し、三自衛隊の輸送任務を担う。

海上輸送群は海上自衛隊に所属するのか

海上自衛隊の一部隊ではなく、防衛大臣直轄の共同部隊である。実任務では統合作戦司令官の指揮下で運用される。

LSVとLCUは何が違うのか

LSVは大量輸送を担う中型輸送艦で、主に岸壁を使う。LCUはより小型で、浅い港湾への進入や、条件が整った砂浜へのビーチングに対応する。LSVが幹線輸送、LCUが島嶼間の支線・最終区間を担う。

「ようこう」は砂浜へ上陸できるのか

公開された建造会社資料では、「ようこう」にビーチング仕様は明記されていない。右舷側の歩板装置を岸壁へ接続して荷役する船である。ビーチング仕様が明記されているのはLCUのにほんばれ型である。

「にほんばれ」はどの程度小さい港へ入れるのか

防衛省は水深の浅い島嶼部の港湾へ輸送できると説明しているが、入港可能な港は水深だけで決まらない。岸壁長、港口幅、旋回水域、潮位、風、波、海底地形などを個別に確認する必要がある。

おおすみ型輸送艦は不要になるのか

不要にはならない。おおすみ型は大型輸送艦で、LCAC2隻を搭載する。LSV・LCUはより小規模な港と島嶼間の反復輸送を担うため、役割が異なる。

海上輸送群は住民避難にも使われるのか

自衛隊の輸送アセットは国民保護に活用する方針だが、海上輸送群の艦がどの任務に何隻使われるかは状況と計画による。自治体、海上保安庁、民間船舶などとの連携が前提となる。

まとめ 海上輸送群は南西防衛を支える海の補給線

自衛隊海上輸送群は、2025年3月に新編された陸・海・空自衛隊共同の海上輸送部隊である。防衛大臣直轄で、実任務では統合作戦司令官の指揮下に入り、三自衛隊の部隊と装備品を運ぶ。

LSV「ようこう」は本土と主要島を結ぶ大量輸送を担い、LCU「にほんばれ」型は浅い港湾や砂浜への輸送を担う。さらに機動舟艇を加え、主要港から小規模島嶼まで貨物を段階的に届ける体制が構築されつつある。

海上輸送群は、攻撃力を直接増やす部隊ではない。しかし、どれほど高性能なミサイルや戦闘車両を配備しても、弾薬、燃料、整備部品が届かなければ継戦できない。南西諸島防衛の実効性は、装備の性能表より、海上輸送群が何度往復し、どれだけ確実に荷物を届け続けられるかに表れる。

私は、この部隊を自衛隊の「裏方」と呼ぶべきではないと考える。兵站は戦闘の後ろにあるのではなく、戦闘が成立する地面そのものだからである。

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